コラム 2025.07.17

親がふらつくのはなぜ?加齢だけじゃない 見落としがちな原因:服薬中の薬の副作用

「最近、親ががよくふらつくようになった気がする」。

高齢の親と暮らしている、あるいは定期的に様子を見に行っているご家族なら、ふとそんな違和感を覚えたことがあるかもしれません。

ふらつきや転倒は、高齢者にとって命に関わる問題にもつながりかねないため、「歳だから仕方ない」と片づけずに、早めにその背景を探ることが大切です。

 

実際に、親の「ふらつき」は単に筋力や体力の低下といった“加齢現象”だけでなく、見落としがちな疾患や生活習慣、薬の副作用など、複合的な要因が絡んでいることが少なくありません

今回は、介護する家族の視点で知っておきたい「ふらつき」の原因と、注意すべきポイントの一つ服薬中の薬の副作用についてお伝えします。

◎見落としがちな原因 服薬中の薬の副作用

高齢者は複数の病気を抱えており、慢性的に複数の薬を服用していることも珍しくありません。たとえば、睡眠薬や抗不安薬、降圧剤、利尿剤、糖尿病薬などは、眠気やめまい、血圧の急な変動などを引き起こすことがあり、結果的にふらつきを招くことがあります。

ふらつきを引き起こしやすい薬剤

抗うつ薬・抗不安薬:アミトリプチリン、クロナゼパム、SSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)などの抗うつ薬やベンゾジアゼピン系薬剤は、ふらつきやめまいのリスクを高めることが報告されています。


鎮痛薬・麻酔薬:術後鎮痛に用いられるケタミンも、特に成人男性でふらつきのリスクが高いとされています。


抗ヒスタミン薬・ベンゾジアゼピン:急性めまいに対して処方されることが多いですが、抗ヒスタミン薬は短時間での症状改善に有効である一方、ベンゾジアゼピンは有効性が限定的です。


その他:抗てんかん薬、降圧薬、抗生物質、抗精神病薬、抗炎症薬なども副作用としてふらつきを引き起こすことがあります。

(Zhou et al., 2025; Voigt et al., 2023; Chimirri et al., 2013; Kai et al., 2025; Ramos, 2006; Filha & Pimentel, 2019)(Zhou et al., 2025)(Propst et al., 2022)(Chimirri et al., 2013))

◎医師への相談、高齢者・特定患者での注意点

薬剤の見直し

高齢者やふらつきのリスクが高い患者では、抗コリン薬や鎮静薬の使用を最小限にし、代替治療を検討することが推奨されています。

(Voigt et al., 2023)

急性めまいの治療

抗ヒスタミン薬は短時間での症状緩和に有効ですが、長期的な効果は限定的です。ベンゾジアゼピンの有効性は低いとされています。

(Propst et al., 2022)

慢性疾患(PPPD等)

SSRIやSNRIなどの抗うつ薬は長期的な症状改善に有効な場合がありますが、感覚過敏の改善には限界があります。

(Kai et al., 2025)

多くの薬剤がふらつきの副作用を持ち、特に高齢者や多剤併用患者では注意が必要です。

薬剤の選択や管理には、患者の年齢や基礎疾患、精神症状の有無を考慮し、必要に応じて薬剤の見直しや代替治療を検討することが重要とされています。

 

特に最近、薬の種類が増えた、あるいは薬が変更されたというタイミングでふらつきが目立ち始めた場合は、医師や薬剤師に副作用の可能性について確認してみましょう

「飲まないと不安」という気持ちもあるかもしれませんが、薬を見直すことで生活の質が大きく改善するケースもあります。

 

家族にできるサポートとは

ふらつきの原因は多岐にわたり、複数の要素が重なっていることもあります。

だからこそ、家族が日常の中で気づく小さな変化こそが、早期の対処につながります

まずは、ふらつきの頻度やタイミング、きっかけを観察してメモしておきましょう

朝だけ? 立ち上がったとき? それとも一日中? また、食欲や睡眠、気分の変化にも目を向けてみてください。医療機関を受診するときには、こうした情報が非常に役立ちます

加えて、住環境の見直しも重要です。

段差をなくす、滑りにくいマットを使う、手すりを設置するといった工夫は、ふらつきをカバーするだけでなく、転倒による大けがを防ぐことにもつながります。

◎「歳だから仕方ない」と言わないために

親のふらつきに気づいたとき、「もう歳だから仕方ない」と思ってしまうのは自然な反応かもしれません。しかし、その一言で見逃してしまう病気や危険も少なくないのです。

ふらつきは、「老い」のサインというよりも、「身体や心の変化を知らせるアラーム」だと考えてみてください

ちょっとした異変に気づけるのは、毎日そばにいる家族だからこそ。遠慮せず、優しく声をかけ、一緒に対策を考えていけたら理想的です。