コラム 2025.08.25

年齢とともに変わる歩き方 自然な変化と注意すべきサインの見分け方

「最近、親の歩き方がなんだか変わった気がする」「つまづく回数が増えたかも」

高齢のご家族を支える方なら、一度は感じたことがあるかもしれません。

歩き方の変化は、加齢に伴う自然な変化の一部であることが多い一方で、病気や転倒リスクの兆候である場合もあります

本コラムでは、理学療法士の視点から、加齢による歩行の変化と、注意が必要なサイン、そして取るべき対策について解説します。

自然な歩行の変化とは?

人は加齢とともに身体機能が徐々に変化していきます。歩行においても、以下のような特徴が見られるのは自然な現象です。

  • ・ 歩幅が狭くなる(歩幅の減少)
  • ・ 歩く速度が遅くなる(歩行速度の低下)
  • ・ 足が地面からあまり離れない(すり足傾向)
  • ・ 体幹がやや前傾し、腕の振りが小さくなる
  • ・ 不安定さを感じて、広めの足幅で歩く

これらの変化は、筋力低下やバランス機能の低下、関節の柔軟性の減少によって引き起こされます。

特に脚の筋肉、なかでも太もも前面の「大腿四頭筋」やお尻の「大殿筋」の萎縮が進むと、足を前に出す力が弱まり、結果として歩幅や速度が落ちてきます(Jung et al., 2021)。

 

注意すべき「歩き方の変化」のサイン

自然な変化と異なり、日常生活に支障を及ぼすような歩き方の変化は、何らかの疾患やリスクの兆候である可能性があります。次のような様子が見られたら、注意が必要です。

  • ・ 理由なくよろける、ふらつく
  • ・ 片足を引きずる、明らかに左右差がある
  • ・ 「痛みがないのに歩きにくい」と訴える
  • ・ 椅子から立ち上がるのが難しい、時間がかかる
  • ・ 無意識に壁や家具をつたって歩くようになる
  • ・ 外出を避けるようになる(活動性の低下)

これらの兆候は、脳血管障害やパーキンソン病などの神経系疾患、股関節や膝関節の変形性関節症、あるいは認知機能の低下とも関係している可能性があります(Verghese et al., 2007)。

また、近年では「歩行速度の低下」が要介護状態になるリスクや死亡率の上昇と関連していることが、国内外の研究で明らかになっています。例えば、1秒間に0.8m未満しか歩けない方は、転倒や日常生活自立度の低下のリスクが高まるとされています(Studenski et al., 2011)。

○周囲の人ができること・支援できること

では、歩き方に違和感を感じたとき、どのような対応が望ましいでしょうか。以下のような対処や支援を考えることができます。

1.状態を正確に把握する

まずは、ご本人の歩行状態や日常生活動作(ADL)を観察し、記録することが大切です。

「歩き始めが遅い」「狭い場所で方向転換しにくい」などの細かい変化も、貴重な情報となります。

また、地域包括支援センターでは、基本チェックリストやフレイル評価表を用いて簡易的な身体機能の評価が可能です。必要に応じて、理学療法士による訪問指導や通所型サービスの利用も検討できます。

.転倒を予防する環境づくり

転倒の多くは家庭内で起きています。

段差の解消、滑りやすい床の改善、手すりの設置など、歩行を支える環境整備が欠かせません。つまづきやすいラグや電気コードなども、危険因子です。

まずは、ご本人の歩行状態や日常生活動作(ADL)を観察し、記録することが大切です。「歩き始めが遅い」「狭い場所で方向転換しにくい」などの細かい変化も、貴重な情報となります。

また、地域包括支援センターでは、基本チェックリストやフレイル評価表を用いて簡易的な身体機能の評価が可能です。必要に応じて、理学療法士による訪問指導や通所型サービスの利用も検討できます。

.筋力・バランス機能の維持・向上

運動は最も有効な予防策のひとつです。

地域の介護予防事業や体操教室などを活用し、下肢筋力やバランスを鍛える習慣を身につけてもらいましょう。特にスクワットや足踏み、片足立ち運動などは、在宅でも取り組みやすい運動です。

理学療法士が関与することで、個々の状態に応じた運動プログラムの提供やフォームの指導が可能になり、安全かつ効果的な介入につながります。

◎おわりに「歩き方」は暮らしのバロメーター

歩行は、単なる移動手段ではありません。

「どのように歩いているか」は、その人の生活力を映す鏡でもあります。

ご家族や支援者が日常のなかで歩き方の変化に気づき、適切に対応することで、要介護状態の予防や自立した生活の延伸につながります。

「なんとなく歩き方が変わった気がする」という感覚は、決して見過ごすべきではありません。地域包括支援センターや理学療法士をはじめとした専門職と連携し、早めの対応を心がけましょう。

・Studenski S, et al. Gait Speed and Survival in Older Adults. JAMA. 2011;305(1):50–58.

・Verghese J, et al. Gait Dysfunction in the Elderly: Prevalence, Risk Factors, and Prognosis. J Am Geriatr Soc. 2007;55(12):1896–1902.

・Jung H-W, et al. Muscle Mass and Walking Speed as Predictors of Functional Decline in Older Adults. Aging Clin Exp Res. 2021.