○健康寿命とはなにか
「健康寿命」という言葉を耳にしたことがある方も多いでしょう。これは、自立して日常生活を送れる期間を指します。
平均寿命が延びても、寝たきりや要介護状態の期間が長ければ、本人にとっても家族にとっても負担が増えてしまいます。
つまり「できるだけ長く元気で過ごす」ことこそが、これからの人生設計において重要な目標となるのです。
○健康寿命を縮める4つのサインと小さな変化
理学療法士として臨床と研究を重ねてきた立場から申し上げると、健康寿命を縮める要因は大きく分けて4つあります。
1. 運動器の衰え(足腰の筋力低下・バランス機能の低下)
2. 心肺機能の低下(息切れや浅い呼吸)
3. 生活習慣病(糖尿病・高血圧・脂質異常症など)
4. 認知機能の低下(記憶力・判断力の衰え)
特に「階段の上り下りに時間がかかるようになった」「ちょっとした坂道で息切れする」といった小さな変化は、健康寿命を縮めるサインです。これを見逃さず、早めに対応することが大切です。
○家庭でできる簡単リハビリトレーニング
健康寿命を延ばすために特別な器具や高価なジム通いは必要ありません。家庭で取り入れられる小さな運動習慣こそが、最も効果的です。
1.階段を使う習慣
エレベーターやエスカレーターではなく、意識的に階段を選びましょう。
階段の上り下りは、脊柱起立筋・大殿筋・ハムストリングス・下腿三頭筋といった主要な抗重力筋を効率よく鍛えられる運動です。
2.椅子スクワット
3.呼吸を意識したエクササイズ
呼吸が浅くなったと感じる方には、「胸郭ストレッチ呼吸法」がおすすめです。
背筋を伸ばして椅子に座り、両手を胸の横に当てながらゆっくりと深呼吸を繰り返します。横隔膜や肋間筋が働きやすくなり、息切れしにくい体づくりが可能です。
4.10分の歩行を分けて取り入れる
「毎日30分歩かなければ」と思うとハードルが高くなりますが、10分程度の歩行を1日2〜3回行うだけで十分効果があります。買い物や散歩を生活の中に組み込みましょう。
○栄養と休養の重用性
運動習慣と並んで欠かせないのが食事と睡眠です。
- ・たんぱく質を意識する:筋肉維持には肉・魚・卵・大豆製品をバランスよく摂取することが大切です。
- ・水分補給:高齢者は喉の渇きを感じにくいため、こまめな水分補給を心がけましょう。
- ・睡眠の質:日中の適度な活動は夜の熟睡につながります。規則正しい生活リズムを整えることも重要です。
○家庭で取り入れられるリハビリサポート
親御さん自身が積極的に取り組むことは難しい場合があります。そこで、家族の声かけや一緒に行う工夫が大切です。
- ・「一緒に散歩しよう」と誘う
- ・「階段で行こう」と自然に促す
- ・家庭菜園や買い物など、生活行為そのものを運動に変える
こうした小さな積み重ねが、継続可能なリハビリとなります。
◎身近な習慣が将来の介護リスクを減らす
親の健康寿命を延ばすために必要なのは、特別な治療や器具ではなく「日常生活の工夫」です。
階段の上り下り、スクワット、深呼吸、短時間の歩行といった身近な習慣が、将来の介護リスクを大きく減らします。
もし「最近、呼吸が浅い」「階段がつらそう」と感じたら、それは始め時のサインです。家族で声をかけ合い、生活の中に運動習慣を取り入れていきましょう。その一歩が、親の健康寿命を延ばし、家族の安心にもつながります。