コラム 2025.09.26

有料老人ホームや高齢者施設で自費訪問リハビリが受けられる?

高齢化が進むなか、有料老人ホームや高齢者施設に入居する方の多くは、日常生活に何らかの支援を必要としています。

特に「歩く」「立ち上がる」「食事をする」といった基本的な動作をできるだけ自分で続けたいという思いは、多くの入居者やご家族に共通する願いです。

こうした希望を実現するために欠かせないのがリハビリですが、介護保険や医療保険のサービスだけでは十分に対応できないケースがあります。

そこで注目されているのが、自費訪問リハビリです。

では、有料老人ホームや高齢者施設に入居していても、このサービスを受けることはできるのでしょうか。本稿では、理学療法を専門とする大学教員の立場から、わかりやすく解説していきます。

介護保険リハビリの限界

介護保険制度のもとで提供されるリハビリは、利用できる時間や内容に制約があります。施設内で行われるリハビリも、

  • ・ 提供できる時間が1回あたり短い
  • ・ 入居者全員に公平に行う必要があるため、内容が画一的になりやすい
  • ・ 個別の細かい目標まで対応しづらい

といった特徴があります。

そのため「もっと歩く練習をしたい」「趣味を続けるための動作を練習したい」といった希望があっても、制度内では十分に応えられないことがあります。

○自費訪問リハビリとは?

自費訪問リハビリとは、介護保険や医療保険の枠に縛られず、利用者が自己負担で理学療法士などの専門職を招いて受けるリハビリサービスです。

特長は次の通りです。

  • ・ 利用回数や時間を自由に設定できる
  • ・ 目的や希望に合わせてオーダーメイドのリハビリが可能
  • ・ 生活の場そのもの(居室や施設内)で直接リハビリができる

つまり、「自分が今どんな生活をしたいか」に直結した内容で取り組めるのが大きな魅力です。

○施設で自費訪問リハビリは受けられるのか?

結論から言うと、多くの有料老人ホームや高齢者施設では、条件を満たせば自費訪問リハビリを受けられます。

ただし、注意すべき点があります。

1.施設の方針や契約内容

施設によっては外部のリハビリ専門職の出入りを制限している場合があります。利用を希望する際は、まず施設に確認することが必要です。

.スタッフとの連携

施設内には介護職員や看護師が常駐しています。外部の理学療法士が入る際には、職員との情報共有が欠かせません。安全面や介護との役割分担を考えながら進めることが大切です。

.費用負担

 介護保険サービスと異なり、全額自己負担になります。料金は事業者によって異なりますが、1回あたり5,000〜10,000円程度が目安とされるケースが多いです。

○どんな効果が期待できる?

有料老人ホームや高齢者施設で自費訪問リハビリを行うことで、高齢者の生活には具体的な変化が期待できます。

  • ・ 歩行や移動の安定: 居室から食堂まで、自分の足で歩けるようになる。
  • ・ 基本動作の改善: ベッドからの起き上がり、椅子からの立ち上がりがスムーズに。
  • ・ 趣味や役割の再開: 書道や園芸など、本人のやりたいことを支える動作を取り戻せる。
  • ・ 自立度の向上: 介助が減り、本人の自信や満足感が高まる。
  • 家族の安心感: 本人の状態が改善し、介護負担が軽減される。

このように、自費訪問リハビリは単に体を動かすだけでなく、生活そのものを変える可能性を持っています。

○理学療法士の役割

自費訪問リハビリを担う理学療法士は、単に運動を指導するだけではありません。

  • 解剖学や生理学の知識に基づき、安全かつ効果的な方法を選ぶ
  • ・ 関節や筋肉に負担をかけない動き方を指導する。
  • ・ 転倒リスクを減らすための環境調整(手すりの活用、動線の工夫)を助言する
  • ・ 介護スタッフと連携し、日常生活に直結する動作を支える

このように、専門知識を活かして「安全」と「自立」の両立を図るのが理学療法士の役割です。

◎自費リハビリは生活の質を高める選択肢

有料老人ホームや高齢者施設に入居していても、条件が整えば自費訪問リハビリは利用可能です。

  • ・ 施設に外部サービスを受け入れる体制があるか確認する
  • ・ 費用と頻度を家族と相談して計画する
  • ・ 専門職と施設スタッフの連携を大切にする

こうした準備を整えれば、自費訪問リハビリは高齢者の生活を大きく変える力になります。

「年齢のせいだから仕方ない」とあきらめるのではなく、新しい選択肢の一つとして自費訪問リハビリを考えてみることが、本人の生活の質を高める第一歩になるでしょう。