「保険外で理学療法士にリハビリをお願いするのは違法ですか?」という質問を、臨床や教育の現場でよく耳にします。
特に「自費訪問リハビリ」という言葉が広まりつつある一方で、まだ制度としての位置づけが十分に浸透していないため、不安を抱かれる方も少なくありません。
結論から言うと、適切な条件を満たしていれば、自費訪問リハビリは違法ではありません。
ただし、保険制度の対象外であることから、誤解やトラブルが生じやすい領域でもあります。
本稿では、理学療法を専門とする大学教員の立場から、「自費訪問リハビリ」が違法にあたらない理由と注意点を整理してお伝えします。
○保険リハビリと自費リハビリの違い
まず、介護保険や医療保険によるリハビリと、自費訪問リハビリの違いを理解しておく必要があります。
・保険リハビリ
医師の指示やケアマネジャーの計画に基づき、医療機関や介護サービス事業所を通じて提供される。自己負担は1〜3割で済むが、時間・頻度・内容には制度上の制限がある。
・自費リハビリ
保険制度を介さず、利用者が全額自己負担で理学療法士や専門職に依頼するサービス。時間や内容を自由に設定できるが、費用は全額自己負担。
ここで重要なのは、「保険を使わないから違法」ということは全くないという点です。むしろ「保険の対象外だからこそ自費になる」という仕組みです。
○なぜ自費リハビリが「違法」と誤解されやすい3つの理由
自費訪問リハビリが「違法では?」と誤解されやすい理由には、以下のようなものがあります。
1.保険サービスと混同している
「訪問リハビリ」という言葉が介護保険サービスにも存在するため、「保険を使わずに提供するのは制度違反では?」と誤解されやすい。
2.無資格者によるサービス提供の問題
理学療法士などの国家資格を持たない人が「リハビリ」と称して指導する場合、それは法的に問題となることがあります。このイメージが「自費リハビリ=違法では?」という誤解につながっています。
3.施設や病院内のルール
有料老人ホームや病院では、外部の専門職がサービスを提供することを規制している場合があります。これは法律違反ではなく、各施設の運営規則によるものです。
○自費訪問リハビリが合法である条件
では、どういう場合に自費訪問リハビリは合法的に提供できるのでしょうか。
・国家資格を有する理学療法士などが行うこと
人体に直接関わる専門的な支援は、国家資格を有する専門職が担う必要があります。
・保険サービスと明確に区別すること
介護保険や医療保険を利用している場合でも、保険枠外で別途「自費サービス」として契約すれば問題はありません。
・利用者と事業者の合意があること
料金や内容を明確に説明し、本人や家族が納得したうえで契約することが大切です。
・施設や居住先のルールを守ること
有料老人ホームやサービス付き高齢者住宅では、外部サービスの利用に制限がある場合があります。その場合は事前に管理者と調整する必要があります。
○自費リハビリを安心して利用するための注意すべき点
では、どういう場合に自費訪問リハビリは合法的に提供できるのでしょうか。
・費用が全額自己負担であること
1回あたり5,000円〜10,000円前後と、長期的に利用する場合は経済的な負担が大きくなる可能性があります。
・事業者の質の見極め
無資格者が「リハビリ」と称してサービスを行っている事例も報告されています。必ず理学療法士など国家資格の有無を確認しましょう。
・医師やケアマネジャーとの連携
特に持病や体調管理が必要な場合は、主治医や介護スタッフと情報共有を行いながら進めることが重要です。
【検討前に3分でわかる:料金・流れ・よくある相談例】
■費用の目安(考え方)
自費リハビリは保険外のため全額自己負担になります。
一般的に1回あたり5,000円〜10,000円前後が目安とされることが多く、頻度や内容によって負担感が変わります。
「まずはどのくらいの頻度が必要か」を、目的(転倒予防/歩行改善/体力維持など)から逆算して考えると整理しやすいです。
■開始の流れ(一般的なイメージ)
1)困っている動作・不安(例:ふらつき、歩行が遅い)を整理
2)問合せ:日程調整・事前確認(施設ルール、連携先など)
3)身体評価:身体機能と生活動作の確認
4)目標設定とプラン提案(どんなことに向けて・維持、向上)
5)実施
6)定期的な評価確認(状態変化に合わせて設定更新)
■よくある相談例(事例)
・例1:歩くのが遅くなり、転倒が不安
→ 歩幅・バランス・筋力の確認と、転倒を減らすための具体策(環境・動作)を整理したい
(参考: https://www.keepup.co.jp/20250729/)
・例2:親が立ち上がるときにふらつく/めまいがある
→ 起立性低血圧なども含めて、見落としがちな原因を押さえたうえで予防に繋げたい
(参考:https://www.keepup.co.jp/20250707/)
・例3:保険内のリハビリだけでは時間や頻度が足りない
→ 目的に合わせて“やる内容”と“続け方”を検討し直したい(契約・説明・連携の確認も含む)
■依頼前に確認したい3つ
・担当者が国家資格保持者(理学療法士など)か
・契約内容と料金の説明が明確か
・主治医やケアマネジャー、施設スタッフと連携できるか
◎正しい知識で「制度の隙間」を埋める自費リハビリを活用しよう
「自費訪問リハビリは違法ですか?」という問いに対する答えは、違法ではありません。
ただし、
- ・ 国家資格を有する理学療法士などが提供していること
- ・ 保険サービスとの区別を明確にしていること
- ・ 契約や料金について十分に説明・同意がなされていること
- ・ 施設や居住先のルールを守っていること
これらの条件を満たして初めて、安全かつ適切に実施されるサービスとなります。
保険外リハビリは「制度の隙間を埋める選択肢」として、多くの高齢者や家族の生活を支えています。誤解や不安を抱かずに、正しい知識を持って上手に活用していただきたいと思います。