「最近、母がよくつまずくようになってきて……」「父が外に出たがらなくなったのは年のせいかな?」
そんな日常の小さな違和感を覚えたことはありませんか?
高齢者の「足が弱ってきた」サインは、実はとてもさりげなく、見逃されがちです。
しかし、その小さな変化が、やがて転倒や要介護状態の引き金となることも少なくありません。
ご家族として、なるべく早くそのサインに気づくことは、とても大切です。
今回は、介護の現場でもよく見られる“足の衰え”の兆候と、気づいたときにできる対策についてお伝えします。
◎「足が弱ってきた」人に見られる5つの変化
高齢者は複数の病気を抱えており、慢性的に複数の薬を服用していることも珍しくありません。
たとえば、睡眠薬や抗不安薬、降圧剤、利尿剤、糖尿病薬などは、眠気やめまい、血圧の急な変動などを引き起こすことがあり、結果的にふらつきを招くことがあります。
1.歩幅が狭くなる
以前は軽快に歩いていたのに、最近は一歩一歩が小さくなっていませんか?
歩幅が狭くなるのは、脚力やバランス能力の低下によるもの。筋力が落ちている、あるいは転倒を恐れて慎重になっているサインかもしれません。
2.椅子から立ち上がるのに時間がかかる
何気ない動作の「立ち上がる」という行為には、大腿四頭筋などの筋力が必要です。
手すりや机につかまらないと立てない、何度か反動をつけてやっと立てるという状態は、明らかな筋力低下を示しています。
3.外出の頻度が減る
「寒いから」「疲れるから」などの理由で外出が減ってきた場合、その背景には“足腰の衰え”が隠れていることもあります。
また、出かける自信がなくなってきている可能性もあるため、注意深く観察が必要です。
4.ちょっとした段差でつまずく
玄関の上がり框(かまち)や歩道の段差など、以前は何ともなかった場所でつまずくようになった場合は、筋力だけでなくバランス感覚や足先の動きの鈍化が疑われます。転倒につながる危険信号です。
5.スリッパを引きずって歩くようになる
足が上がりにくくなると、すり足のような歩き方になります。
スリッパや靴を引きずって歩いているようなら、歩行に必要な筋力や柔軟性が落ちてきている可能性があります。
◎変化を見逃さない「日常会話」のヒント
「最近、足が重い気がする」
「腰が痛くて歩くのがつらい」
「このごろ疲れやすくて……」
こうした言葉も、身体の変化の“声なきサイン”です。
本人は深刻に思っていなくても、筋力低下や痛み、バランス感覚の問題が進行している場合があります。
また、精神的な変化も見逃せません。歩ける距離が短くなることで「外に出ても迷惑をかけそう」「転んだら怖い」と考え、気持ちがふさぎ込む方もいます。
そうした背景に寄り添いながら、「最近どう?」「どこか痛いところはない?」と、自然な会話の中で様子を聞いていくことが大切です。
○足の衰えを予防するには?
高齢者の“足の衰え”は、完全に防ぐことはできなくても、進行を遅らせたり、回復を促したりすることは可能です。以下のような取り組みが効果的です。
○1日1回は外に出る習慣を
外出は、筋力維持だけでなく認知機能の維持にも効果的です。
家の近くを一周するだけでもかまいません。歩くことで足腰を使う時間を日々確保しましょう。
○家の中でも「ながら運動」を
洗い物をしながら、片足立ちを10秒ずつ。テレビを見ながら、足首をぐるぐる回す。
日常動作の中に運動を“混ぜる”ことで、無理なく継続できます。
○バランスの良い食事を意識する
特に筋肉の材料となる「たんぱく質」は意識して摂取したい栄養素です。
魚・肉・卵・大豆製品をバランスよく取り入れることで、筋力低下の予防につながります。
○転倒予防の住環境を整える
段差をなくす、手すりを設置する、滑りやすいマットを撤去するなどの工夫も大切です。
「歩きやすさ」は「歩こうという意欲」にもつながります。
◎「足が弱ってきた」と気づいたら、どうすれば?
兆候に気づいたときは、早めに地域の包括支援センターやかかりつけ医、理学療法士などに相談しましょう。状態に応じて、デイサービスでの運動プログラムや訪問リハビリなどを活用することができます。
大切なのは、“何か起きてから”ではなく、“変化に気づいたとき”に動くこと。早期の対応が、将来の転倒・入院・寝たきりを防ぐ第一歩となります。
◎おわりに
足の衰えは、見た目では分かりづらく、本人も気づいていないことが多いものです。
でも、日常の中にある小さな「変化」に目を向けてみると、その兆しは確かにあります。
「ちょっと最近、歩き方が変わったかも?」「そういえば、外に出るのをためらっているな」
そんな気づきが、ご家族のサポートの第一歩です。これからも、無理のない範囲で見守りながら、元気な足を保つお手伝いをしていきましょう。