Column コラム

身体的フレイル予防体操~自宅で始める、一生歩ける体づくり~

身体的フレイルの予防には、適切な運動が最も効果的です。

しかし、「どんな運動をすればいいのか分からない」「ジムに通うのは大変」という声をよく耳にします。

そこで、理学療法士の知識と経験に基づいた、自宅で安全に実践できる「身体的フレイル予防体操」をご紹介します。

この体操は、筋力、バランス、柔軟性、持久力という、日常生活に必要な4つの身体機能をバランスよく鍛えることを目的としています。

特別な器具は不要で、1日15〜20分程度で実施できます。

○身体的フレイル予防体操の特徴

科学的根拠に基づいた内容: 理学療法士・医学博士の専門知識に基づき、身体的フレイル予防に最も効果的な運動を厳選しています。

安全性を重視: 高齢者でも安全に実施できるよう、負荷や難易度を調整できる内容になっています。

日常生活動作に直結: 立ち上がる、歩く、階段を上る、物を持つなど、日常生活で必要な動作に直結した運動です。

継続しやすい: 自宅で、テレビを見ながらでもできる簡単な動作で構成されています。

○体操を始める前の注意事項

体調チェック

  • ・体調が悪いとき、発熱時は無理をしない
  • ・痛みが強いときは中止する
  • ・持病がある方は主治医に相談してから始める

環境の準備

  • ・滑りにくい床で行う
  • ・周囲に障害物がないことを確認
  • ・安定した椅子や手すりを準備
  • ・動きやすい服装で行う

運動の原則

  • ・呼吸を止めずに行う
  • ・痛みのない範囲で行う
  • ・無理をせず、徐々に回数を増やす
  • ・毎日継続することが大切

<<身体的フレイル予防体操プログラム>>

○ウォーミングアップ

1. 深呼吸運動 

  • ・椅子に座った状態で実施
  • ・鼻から大きく息を吸い、口からゆっくり吐く
  • ・5回繰り返す
  • 効果:リラックス、血流改善

2. 首のストレッチ 

  • ・ゆっくりと首を前後左右に倒す
  • ・各方向5秒ずつキープ
  • ・左右に回旋する
  • 効果:首の柔軟性向上、肩こり予防

3. 肩回し運動 

  • ・両肩を前から後ろに大きく回す:10回
  • ・後ろから前に回す:10回
  • 効果:肩の可動域向上、肩こり改善

4. 足首の運動 

  • ・椅子に座り、つま先を上げ下げする:10回
  • ・足首を時計回り・反時計回りに回す:各10回
  • 効果:足首の柔軟性向上、むくみ予防

○メイン運動①:下肢筋力トレーニング(5分)

下肢の筋力は、歩行能力と転倒予防に最も重要です。

5. 椅子からの立ち上がり運動 

  • ・椅子に浅く腰掛ける
  • ・両手を胸の前でクロス(または椅子の座面に軽く置く)
  • ・ゆっくり立ち上がり、2秒静止
  • ・ゆっくり座る
  • ・10回×2セット
  • 効果:大腿四頭筋(太もも前面)、臀筋の強化

<ポイント>

  • ・膝がつま先より前に出ないように
  • ・上体を少し前に傾けて立ち上がる
  • ・勢いをつけずにゆっくりと

<難易度調整>

  • ・簡単:手すりや椅子の肘掛けを使う
  • ・標準:手を胸の前でクロス
  • ・難しい:両手を前に伸ばして立ち上がる

6. かかと上げ運動 

  • ・安定した椅子の背もたれや壁に軽く手を添える
  • ・両足でかかとを上げる、2秒キープして下ろす
  • ・15回×2セット
  • 効果:ふくらはぎの筋力強化、バランス向上

<ポイント>

  • ・できるだけ高く上げる
  • ・ゆっくりと下ろす
  • ・バランスを崩さないように

<難易度調整>

  • ・簡単:両手でしっかり支える
  • ・標準:指先を軽く添える程度
  • ・難しい:片足ずつ行う

7. 太もも上げ運動 

  • ・椅子に座り、背筋を伸ばす
  • ・片足の太ももを持ち上げる、2秒キープ
  • ・左右交互に各10回×2セット
  • 効果:腸腰筋(股関節の筋肉)の強化、歩行能力向上

<ポイント>

  • ・膝は90度を保つ
  • ・上体は真っ直ぐに保つ
  • ・足首は軽く曲げる

○メイン運動②:バランストレーニング(3分)

転倒予防に不可欠なバランス能力を鍛えます。

8. 片足立ち 

  • ・壁や椅子の背もたれに手を添える
  • ・片足を床から少し(5cm程度)浮かせる
  • ・左右各30秒×2セット
  • 効果:バランス能力向上、転倒予防

<ポイント>

  • ・最初は軽く手を添えて行う
  • ・慣れたら指先だけで支える
  • ・浮かせた足は前方に軽く出す

<安全のために>

  • ・必ず転倒防止のために支えを準備
  • ・無理に長時間行わない

9. つま先立ち歩行 

  • ・壁に沿って、つま先立ちで歩く
  • ・5歩前進、5歩後退を3回
  • 効果:バランス能力、ふくらはぎの筋力

<ポイント>

  • ・壁に手を添えて行う
  • ・小刻みな歩幅で
  • ・無理のない範囲で

○メイン運動③:体幹・上司のトレーニング(3分)

姿勢保持と日常動作に必要な体幹・上肢を鍛えます。

10. 椅子での腹筋運動 

  • ・椅子に浅く座り、背もたれから背中を離す
  • ・両手を太ももに置き、上体を後ろに倒す
  • ・倒せるところまで倒して5秒キープ
  • ・ゆっくり戻す
  • ・10回×2セット
  • 効果:腹筋、背筋の強化、姿勢改善

<ポイント>

  • ・呼吸を止めない
  • ・痛みのない範囲で
  • ・背中を丸めない

11. 壁腕立て伏せ 

  • ・壁の前に立ち、肩幅より少し広く手を壁につける
  • ・肘を曲げて体を壁に近づける
  • ・肘を伸ばして元に戻る
  • ・10回×2セット
  • 効果:上肢、胸部の筋力強化

<ポイント>

  • ・体は一直線を保つ
  • ・肘は外側に開きすぎない
  • ・ゆっくりとした動作で

○クールダウン(4分)

12. 太もも裏のストレッチ 

  • ・椅子に浅く座り、片足を前に伸ばす
  • ・伸ばした足のつま先を上に向ける
  • ・上体をゆっくり前に倒す、20秒キープ
  • ・左右各2回
  • 効果:ハムストリングス(太もも裏)の柔軟性向上

13. 股関節のストレッチ 

  • ・椅子に座り、片足の足首を反対側の膝の上に乗せる
  • ・背筋を伸ばしたまま上体を前に倒す、20秒キープ
  • ・左右各2回
  • 効果:股関節の柔軟性向上

14. 全身伸び 

  • ・椅子に座ったまま、両手を上に伸ばす
  • ・大きく伸びをして深呼吸
  • ・3回繰り返す
  • 効果:全身のリラックス

15. 深呼吸 

  • ・鼻から大きく吸って、口からゆっくり吐く
  • ・5回繰り返して終了
  • 効果:心拍数の正常化、リラックス

○実施スケジュール例

基本プログラム(毎日)

  • ・朝:ウォーミングアップ+下肢筋力トレーニング+クールダウン(約10分)
  • ・夕方:バランストレーニング+体幹トレーニング(約5分)

理想的なプログラム

  • ・月・水・金:全プログラム実施(20分)
  • ・火・木・土:軽めの運動(ウォーミングアップ+好きな運動+クールダウン)
  • ・日:軽い散歩やストレッチ

最低限のプログラム

  • ・週3回以上、各15分以上

○効果を高めるポイント

記録をつける: 運動した日付、実施した内容、気づいたことなどを記録すると、継続しやすくなります。

目標を持つ: 「孫と一緒に公園で遊ぶ」「旅行に行く」など、具体的な目標があるとモチベーションが維持できます。

仲間と一緒に: 家族や友人と一緒に行うと、継続しやすく、楽しくなります。

徐々に負荷を上げる: 慣れてきたら、回数を増やす、難易度を上げるなど、少しずつ負荷を高めていきましょう。

生活習慣に組み込む: 朝の歯磨きの後、テレビを見る前など、生活習慣の中に組み込むと継続しやすくなります。

○こんな症状がある時は専門家に相談を

自宅での体操は有効ですが、以下のような場合は専門家のサポートをお勧めします。

運動中・運動後に痛みがある: 正しいフォームで行えていない可能性があります。理学療法士による指導を受けることで、安全で効果的な運動が可能になります。

効果が実感できない: 3ヶ月以上継続しても効果を感じられない場合、運動の内容や強度が適切でない可能性があります。

持病があり不安がある: 心疾患、糖尿病、高血圧、関節疾患などがある方は、専門家の評価を受けた上で、個別にプログラムを作成してもらうことをお勧めします。

より高い目標を目指したい: 「登山を再開したい」「ゴルフを楽しみたい」など、より高い目標がある場合は、それに特化したトレーニングが必要です。

一人では継続できない: グループでの運動プログラムに参加することで、仲間と励まし合いながら継続できます。

○専門的サポートの価値

この体操プログラムは、身体的フレイル予防の基本となるものです。しかし、一人ひとりの体力、疾患、目標は異なります。

理学療法士による専門的な評価を受けることで、あなたの現在の身体機能を正確に把握し、最適な運動プログラムを作成できます。正しいフォームの指導、適切な負荷設定、進捗状況のモニタリングなど、専門家ならではのサポートが、より確実で安全な効果をもたらします。

特に、自費リハビリテーションサービスでは、時間をかけた丁寧な指導、個別のプログラム作成、そして継続的なサポートが可能です。あなたの「やりたいこと」を実現するために、私たち専門家が全力でサポートいたします。

◎身体的フレイル予防体操を生活の一部に

身体的フレイル予防体操は、毎日の小さな積み重ねです。難しいことをする必要はありません。この体操を生活の一部として、楽しみながら続けていくことが大切です。

「継続は力なり」という言葉の通り、1日15分の体操が、5年後、10年後の健康な体を作ります。今日から、一緒に始めてみませんか。いつまでも自分の足で歩ける、自立した生活を送るために。

不安なことがあれば、いつでも専門家にご相談ください。あなたの健康で活動的な人生を、私たちがサポートいたします。