Column コラム

関節疾患を予防する~要介護にならないためにできる事~

膝関節や股関節について、不安はありませんか。要支援者の原因第1位である「関節疾患」の原因と対策について解説します。

早期発見のポイントや、予防や進行を抑制するために今からできる運動、痛みがある場合の対処方法もお伝えしますので、ぜひ参考にしてみてください。

関節疾患が要支援の最大原因

令和4年の厚生労働省「国民生活基礎調査」によれば、要支援者の原因第1位は「関節疾患」で19.3%を占めています。
関節疾患、特に変形性膝関節症と変形性股関節症は、痛みと可動域制限により、歩行、階段昇降、しゃがむ動作などを困難にし、日常生活の自立度を大きく低下させます。

重要なのは、関節疾患の多くは「加齢だから仕方ない」というものではなく、予防可能であるということです。研究によれば、適切な体重管理と運動習慣により、変形性膝関節症の発症リスクを約50%減少させることができます¹。

変形性膝関節症(膝OA)とは ~最も多い関節疾患~

変形性膝関節症とは、膝関節の軟骨が摩耗し、骨が変形する疾患です。
日本での大規模調査では、50歳以上の日本人の約47%にX線上の変形性膝関節症が認められ、そのうち約30%に痛みなどの症状があることが報告されています²。

変形性膝関節症の危険因子

1.肥満(最大の予防可能因子)

肥満(BMI 30以上)の人は、正常体重の人に比べて膝OAの発症リスクが約2.6倍高いことがわかっています³。
なぜ肥満が膝に悪いのか:

  • 体重1kg増加ごとに、歩行時に膝には約3〜4kgの負担
  • 体重10kg減らせば、膝への負担は30〜40kg軽減
  • 脂肪組織から出る炎症物質が軟骨を傷める

研究では、体重を10%減らすことで、膝の痛みと機能が有意に改善することが示されています⁴。

2.筋力低下

大腿四頭筋(太ももの前面の筋肉)の筋力低下は、変形性膝関節症の発症と進行の重要な危険因子です。
研究では、変形性膝関節症患者の大腿四頭筋筋力は、健常者に比べて約18〜38%低いことが報告されています⁵。

筋肉は関節の「天然のサポーター」です。筋力が低下すると、関節への衝撃吸収能力が落ち、軟骨への負担が増します。

3.O脚・X脚(アライメント異常)

膝の内側または外側に負担が偏り、軟骨の摩耗が加速します。

4.過去の怪我

若い頃のスポーツ外傷(靱帯損傷、半月板損傷)は、将来の膝OAリスクを約3〜6倍高めます。

5.女性であること

閉経後の女性ホルモン低下が関節に影響すると考えられています。

○変形性膝関節症の予防戦略

適正体重の維持と運動・生活習慣

1.適正体重の維持

BMI(体格指数)の計算

  • BMI = 体重(kg) ÷ 身長(m) ÷ 身長(m)
  • 目標:BMI 18.5〜24.9(特に22〜23が理想)

体重管理のポイント

  • 食事:バランスの良い食事、腹八分目
  • 運動:有酸素運動(ウォーキング、水泳)で消費カロリー増加
  • 目標:月1kg程度のゆっくりとした減量

2.大腿四頭筋の強化

大腿四頭筋筋力トレーニングが膝OAの痛みと機能を有意に改善することがわかっています⁶。

効果的な運動:椅子からの立ち上がり運動

  • 椅子に浅く座り、両手を胸の前でクロス
  • ゆっくり立ち上がり、2秒静止
  • ゆっくり座る
  • 10回×3セット、週3〜4回

膝伸ばし運動(セッティング)

  • 椅子に座り、片足を前に伸ばす
  • 膝裏を床に押し付けるように力を入れ、5秒キープ
  • 10回×3セット、毎日

スクワット(負担を感じない範囲で)

  • 壁や椅子に手を添えて実施
  • 膝を軽く曲げる程度(痛みのない範囲)
  • 10回×3セット、週3回

3.適切な運動習慣

運動療法が変形性膝関節症の痛みを軽減し、機能を改善することが強く推奨されています7。

推奨される運動:

  • 水中運動:浮力により膝への負担が軽減(体重の約10分の1)
  • ウォーキング:適度な刺激が軟骨の代謝を促進
  • サイクリング:膝への衝撃が少ない

避けるべき運動:

  • ランニング、ジャンプ(膝への衝撃が大きい)
  • 深いスクワット、正座の強要
  • 痛みを我慢しての運動

4.関節に優しい生活習慣

  • 正座を避け、椅子の生活を
  • 重い荷物を持つときは両手で分散
  • 階段よりエレベーター・エスカレーターを利用(下りは特に負担大)
  • 適切な靴の選択(クッション性の良い靴)
  • サポーターの活用(不安定感がある場合)

○変形性股関節症とは ~女性に多い疾患~

股関節症の特徴

股関節は体重を支える重要な関節です。変形性股関節症は、特に日本人女性に多く、その約80%は先天性股関節脱臼や臼蓋形成不全(受け皿が浅い)が原因です。

予防と進行抑制

1.股関節周囲筋の強化

<お尻歩き運動>

  • 床に座り、お尻で前後に歩く
  • 前後10歩×3セット、毎日

<横向き足上げ運動>

  • 横向きに寝て、上の足を持ち上げる
  • 10回×3セット、左右とも

2.ストレッチング

股関節の柔軟性維持が重要です。
<股関節のストレッチ>

  • 椅子に座り、片足の足首を反対側の膝に乗せる
  • 上体をゆっくり前に倒し、20秒キープ
  • 左右各3回

3.体重管理

股関節にも体重増加は大きな負担です。

○関節リウマチとは ~早期発見・早期治療が鍵~

関節リウマチは、免疫の異常により関節に炎症が起こる病気です。変形性関節症とは異なり、早期に適切な治療を開始することで、関節の破壊を防ぐことができます。

早期発見のポイント

早期発見のポイント
以下の症状があれば、すぐにリウマチ専門医を受診しましょう。

  • 朝のこわばりが1時間以上続く
  • 複数の関節が腫れて痛む
  • 左右対称に症状が出る
  • 手の小さな関節(指、手首)が腫れる

研究では、発症3ヶ月以内に治療を開始すると、関節破壊を大幅に抑制できることが示されています⁸。

栄養による関節サポート

関節に良い栄養素
1.オメガ3脂肪酸
オメガ3脂肪酸の摂取が関節の炎症を軽減することが示されています⁹。

  • 青魚(サバ、イワシ、サンマ)を週2〜3回
  • くるみ、亜麻仁油

2.ビタミンD
ビタミンD不足が膝OAの進行と関連することが報告されています¹⁰。

  • 青魚、きのこ類
  • 日光浴(1日15〜30分)

3.ビタミンC
軟骨のコラーゲン合成に必要です。

  • 青果物(いちご、キウイ、柑橘類)
  • 野菜(ブロッコリー、パプリカ)

4.抗酸化物質
酸化ストレスが関節炎症を悪化させます。

  • 色の濃い野菜・果物
  • 緑茶

避けるべき食品

  • 加工食品、ファストフード(炎症を促進)
  • 過度の砂糖、精製炭水化物
  • 過度のアルコール

グルコサミン・コンドロイチンの効果(エビデンスは限定的)

グルコサミンとコンドロイチンの膝OAへの効果は限定的であることが示されています¹¹。万能ではありませんが、一部の人には効果がある可能性があります。より重要なのは、運動と体重管理です。

痛みのセルフマネジメント

急性期の対応(RICE)
関節が腫れて熱を持っている場合:

  • Rest(安静):無理な動作を避ける
  • Ice(冷却):1回15〜20分、1日3〜4回
  • Compression(圧迫):サポーターで適度に圧迫
  • Elevation(挙上):心臓より高い位置に

慢性期の対応

  • 温熱療法:入浴、温湿布で血流改善
  • 適度な運動:安静にしすぎない
  • 痛み止めの適切な使用:主治医と相談

○理学療法士による専門的サポート

個別評価の重要性
関節疾患は、一人ひとりの状態が異なります。理学療法士は以下のような専門的評価を行い、評価に基づき個別プログラムを作成します。

理学療法士による専門的評価:
 ・関節の可動域測定
 ・筋力評価
 ・歩行分析
 ・アライメント(骨の配列)評価
 ・痛みの詳細な評価

個別プログラムの作成:
 ・あなたの関節に合った運動処方
 ・痛みを悪化させない運動の選択
 ・日常生活動作の指導
 ・補助具・装具の提案

研究では、理学療法士による個別指導が、集団指導よりも膝OAの改善に効果的であることが示されています¹²。

○自費リハビリテーションの価値

保険診療では時間や回数に制限がありますが、自費リハビリテーションでは以下のようなことが可能です。

 ・十分な時間をかけた評価と指導
 ・継続的なモニタリングとプログラム調整
 ・予防段階からの介入が可能
 ・あなたのペースに合わせたプログラム

◎関節疾患は予防が重要

関節疾患の多くは予防可能です。適正体重の維持、筋力強化、適切な運動習慣―これらが関節を守る三本柱です。
特に重要なのは「痛みが出る前からの予防」です。関節の軟骨は一度すり減ると元に戻りません。痛みが出てからではなく、今から関節を大切にする生活を始めましょう。

既に痛みがある方も、適切な運動療法により症状の改善が期待できます。しかし、間違った運動は関節を傷めます。専門家の指導のもと、あなたに最適なプログラムで、関節を守り、いつまでも自分の足で歩ける体を維持しましょう。

reference:

  1. 1.Losina E, et al. Impact of obesity and knee osteoarthritis on morbidity and mortality in older Americans. Ann Intern Med. 2011;154(4):217-226.
  2. 2.Yoshimura N, et al. Prevalence of knee osteoarthritis, lumbar spondylosis, and osteoporosis in Japanese men and women: the research on osteoarthritis/osteoporosis against disability study. J Bone Miner Metab. 2009;27(5):620-628.
  3. 3.Blagojevic M, et al. Risk factors for onset of osteoarthritis of the knee in older adults: a systematic review and meta-analysis. Osteoarthritis Cartilage. 2010;18(1):24-33.
  4. 4.Messier SP, et al. Effects of intensive diet and exercise on knee joint loads, inflammation, and clinical outcomes among overweight and obese adults with knee osteoarthritis. JAMA. 2013;310(12):1263-1273.
  5. 5.Slemenda C, et al. Quadriceps weakness and osteoarthritis of the knee. Ann Intern Med. 1997;127(2):97-104.
  6. 6.Uthman OA, et al. Exercise for lower limb osteoarthritis: systematic review incorporating trial sequential analysis and network meta-analysis. BMJ. 2013;347:f5555.
  7. 7.Fransen M, et al. Exercise for osteoarthritis of the knee. Cochrane Database Syst Rev. 2015;(1):CD004376.
  8. 8.Smolen JS, et al. EULAR recommendations for the management of rheumatoid arthritis with synthetic and biological disease-modifying antirheumatic drugs: 2019 update. Ann Rheum Dis. 2020;79(6):685-699.
  9. 9.Goldberg RJ, Katz J. A meta-analysis of the analgesic effects of omega-3 polyunsaturated fatty acid supplementation for inflammatory joint pain. Pain. 2007;129(1-2):210-223.
  10. 10.McAlindon TE, et al. Relation of dietary intake and serum levels of vitamin D to progression of osteoarthritis of the knee among participants in the Framingham Study. Ann Intern Med. 2996;125(5):353-359.
  11. 11.Runhaar J, et al. Identifying potential working mechanisms behind the positive effects of exercise therapy on pain and function in osteoarthritis; a systematic review. Osteoarthritis Cartilage. 2015;23(7):1071-1082.
  12. 12.Zhang W, et al. OARSI recommendations for the management of hip and knee osteoarthritis, Part II: OARSI evidence-based, expert consensus guidelines. Osteoarthritis Cartilage. 2008;16(2):137-162.