Column コラム

三次予防~要介護状態でも諦めない、より良い生活を目指して~

前回の記事では、一次予防、二次予防についてご紹介しました。
続いて今回の記事では、三次予防である要介護状態にある方を対象とした介護予防の取り組みについて、お伝えします。

三次予防とは

三次予防は、すでに要介護状態にある方を対象とした介護予防の取り組みです。「介護予防」という言葉から、「介護が必要になる前の予防」だけをイメージする方も多いかもしれませんが、実は要介護状態になった後も、予防の取り組みは続きます。

三次予防の目的は、要介護状態の悪化を防ぎ、できる限りの機能回復や維持を図ることです。
「今よりも状態を良くする」「今の状態を維持する」「急激な悪化を防ぐ」という3つの側面があります。要介護状態だからといって、すべてをあきらめる必要はありません。適切な支援とリハビリテーションによって、生活の質を向上させることは十分に可能です。

○三次予防の重要性

要介護状態になると、日常生活に何らかの支援が必要になります。しかし、この状態を放置すると、さらに悪化する可能性があります。例えば、要介護1の状態から適切なケアやリハビリを受けずにいると、1年後には要介護2や3へと進行するケースも少なくありません

一方、適切な三次予防に取り組むことで、要介護度の改善や維持が期待できます
実際に、リハビリテーションを中心とした介護サービスを利用することで、要介護3から要介護1に改善した事例や、要介護5の方が在宅生活を継続できている事例も数多く報告されています。

重要なのは、「できないことを無理にさせる」のではなく、「できることを維持・拡大する」という視点です。残存機能を最大限に活用し、本人らしい生活を続けられるよう支援することが、三次予防の本質です。

○三次予防の具体的な取り組み

ハビリテーション
理学療法士、作業療法士、言語聴覚士などの専門家による個別のリハビリテーションが中心となります。歩行訓練、日常生活動作の訓練、嚥下訓練、言語訓練など、個人の状態に応じたプログラムが提供されます。訪問リハビリ、通所リハビリ、入所リハビリなど、様々な形態があります。

自立支援型の介護サービス
従来の「お世話型」の介護ではなく、本人ができることは自分で行い、必要な部分だけを支援する「自立支援型」の介護が重視されています。例えば、食事の際に全介助ではなく、自分で食べられる部分は自分で食べてもらい、必要な部分だけを手伝います。

福祉用具の活用
歩行器、車いす、特殊寝台、手すりなど、適切な福祉用具を活用することで、自立した生活動作が可能になります。理学療法士や福祉用具専門相談員などのアドバイスを受けながら、本人に合った用具を選ぶことが大切です。

住環境の整備
手すりの設置、段差の解消、滑り止めマットの使用など、住環境を整えることで、安全に生活できるようになります。介護保険の住宅改修制度を利用することもできます。

栄養管理と口腔ケア
要介護状態では、さらなる低栄養や口腔機能の低下を防ぐことが重要です。管理栄養士による栄養管理、歯科衛生士による口腔ケアを継続的に受けることで、全身状態の維持につながります。

認知機能の維持
認知症がある場合でも、適切な認知症ケアやリハビリテーションによって、症状の進行を遅らせることができます。回想法、音楽療法、園芸療法など、様々なアプローチがあります。

介護保険サービスの活用
要介護認定を受けた方は、様々な介護保険サービスを利用できます。

在宅サービス

  • 訪問介護(ホームヘルプ)
  • 訪問看護
  • 訪問リハビリテーション
  • 通所介護(デイサービス)
  • 通所リハビリテーション(デイケア)
  • ショートステイ

施設サービス

  • 介護老人保健施設
  • 介護療養型医療施設
  • 特別養護老人ホーム

これらのサービスを組み合わせて、ケアマネジャーと相談しながら、本人に最適なケアプランを作成します。

○三次予防成功のポイント

本人の意欲を大切に
リハビリテーションや介護予防の取り組みは、本人のやる気が何より重要です。「歩けるようになりたい」「家族と食事をしたい」「趣味を続けたい」といった目標を持つことで、意欲が高まります。

小さな成功体験の積み重ね
「昨日よりも3歩多く歩けた」「自分でボタンをかけられた」といった小さな成功体験を積み重ねることが、継続的な取り組みにつながります。
家族の理解と協力 家族が「かわいそうだから」と何でもやってあげてしまうと、本人の能力が低下します。「見守りながら、できることは自分でやってもらう」という姿勢が大切です。

多職種連携
医師、看護師、理学療法士、作業療法士、ケアマネジャー、介護福祉士など、様々な専門職が連携して支援することで、より効果的な三次予防が実現します。

定期的な評価と見直し
3ヶ月ごとなど定期的に状態を評価し、必要に応じてケアプランやリハビリ内容を見直すことが重要です。

家族ができること
要介護状態の方を支える家族にも、できることがあります。

  • リハビリで学んだことを日常生活でも実践できるよう見守る
  • できることは自分でやってもらい、必要な部分だけを支援する
  • 小さな進歩を認め、励ます
  • 無理強いせず、本人のペースを尊重する
  • 介護サービスを適切に利用し、家族自身の負担も軽減する

家族が元気でいることも、本人の生活の質向上につながります。

◎要介護状態でも専門職の支援による三次予防が大切

三次予防は、要介護状態になっても「より良い生活」を目指す取り組みです。年齢や状態に関係なく、人は変化し、成長する可能性を持っています。
「もう年だから」「要介護だから」とあきらめず、今できることから始めましょう。専門職の支援を受けながら、本人と家族が協力して取り組むことで、必ず良い変化が生まれます。
要介護状態でも、その人らしく、尊厳を持って生きることができる社会。それを実現するのが三次予防です。一歩ずつ、前に進んでいきましょう。